AI研修 助成金|対象外になる研修の条件と経費75%の使い方

AI研修に助成金は使える?3行でわかる結論

AI研修の様子と助成金の書類を並べたイメージ

AI研修を検討すると、必ず費用の壁にぶつかります。

中小企業基盤整備機構が2026年3月に公表した「中小企業のAI等の利活用に係る実態調査」では、AI導入を進めるために必要な公的支援として「導入費用などの助成」を挙げた企業が77.9%にのぼりました

「従業員向けの教育・研修」も67.7%と高い水準です。

同じ調査で、中小企業のAI導入率は20.4%。検討中の企業を含めると39.0%が前向きという結果でした。

つまり、費用の支援と人材育成はどちらも中小企業のニーズのど真ん中にあります。

この記事では、AI研修に使える助成金のしくみと金額、申請の流れ、そして対象外になるケースについて解説します。

結論:「企業内のDX化に伴う訓練」なら対象になり得る

AI研修は、設計次第で国の助成金の対象になり得ます。中小企業なら経費の75%が助成されます。

まず結論を3行でまとめます。

  • 使える制度:人材開発支援助成金「事業展開等リスキリング支援コース」
  • 助成額:中小企業なら訓練経費の75%+賃金が1人1時間あたり1,000円
  • 期限:令和4〜8年度の期間限定。2026年度が最終年度とされている

「AI研修専用の助成金」というものは存在しません。

そのかわり、AI研修を企業内のDX化を進めるための訓練として位置づけられれば、上記の制度が使えます。

このコースが対象とする訓練の3類型のうち、ひとつが「企業内のDX化・GX化に伴う訓練」だからです。

これは推測ではありません。

厚生労働省のパンフレットに載っている活用事例には、AIを使った問診の導入(医療・福祉)や、AIによる配送ルート最適化(運輸・郵便業)が実際に挙げられています。

ただし、申請すれば必ず支給されるわけではない点には注意してください。労働局の審査があり、訓練の中身によっては対象外と判断されることもあります。

この記事では、その分かれ目まで含めて解説します。

ただし「使い方を覚えるだけの研修」は対象外になり得る

ツールの操作方法を覚えるだけの内容だと、対象外と判断されることがあります。

ここが、AI研修 助成金でいちばん見落とされやすいポイントになります。

たとえば「ChatGPTの使い方講座」のように、ツールの操作を覚えることが中心の研修は、対象外と判断される可能性があります。

逆にいえば、同じAI研修でも設計次第で結果が変わるということ。

判断の分かれ目については、この記事の後半で厚生労働省の記載を引用しながら詳しく見ていきます。

この記事の情報の時点と、必ず確認してほしいこと

本記事は2026年7月時点の情報です。最新の内容は厚生労働省と労働局で確認してください。

助成金の制度は改正されます。実際、このコースの賃金助成の単価も960円から1,000円へ引き上げられており、古い情報を載せたままのページも少なくありません。

本記事の数字は、厚生労働省が公開している最新のパンフレット(令和8年5月14日現在の内容)をもとにしています。

とはいえ、記事を読んでいる時点でさらに改正されている可能性は残ります。

なお、この記事は制度のしくみを解説するものであり、個別の企業が支給を受けられるかどうかを判断するものではありません。申請実務は社労士の専門領域になります。

実際に進める際は、必ず専門家か労働局にご相談ください。

AI研修に使えるのはどの助成金か

人材開発支援助成金のコース構成を示した図

「AI研修に助成金が使えるらしい」と聞いても、どの制度を指すのかまでは分かりにくいものです。

結論からいえば、厚生労働省の人材開発支援助成金のなかにある「事業展開等リスキリング支援コース」が該当します。

ここでは制度の位置づけと、対象になる訓練の3類型、そして厚生労働省自身が示しているAI関連の活用事例について解説します。

人材開発支援助成金「事業展開等リスキリング支援コース」とは

新しい分野に必要な知識・技能を学ばせる訓練に対して、経費と賃金の一部を助成する制度です。

AI研修 助成金として最も現実的な選択肢が、この「事業展開等リスキリング支援コース」になります。

人材開発支援助成金には、次の7つのコースがあります。

  • 人材育成支援コース
  • 教育訓練休暇等付与コース
  • 人への投資促進コース
  • 事業展開等リスキリング支援コース
  • 建設労働者認定訓練コース
  • 建設労働者技能実習コース
  • 障害者職業能力開発コース

このうち事業展開等リスキリング支援コースは、厚生労働省の説明によれば「新規事業の立ち上げなどの事業展開に伴い、事業主が雇用する労働者に対して新たな分野で必要となる知識及び技能を習得させるための訓練」を対象としています。

ポイントは、対象が「新規事業の立ち上げ」だけに限られない点です。次に見るとおり、社内のDX化を進めるための訓練も対象に含まれます。

AI研修が入り込む余地はここにあります。

対象になる訓練の3類型(AI研修は②に該当し得る)

対象は3類型あり、AI研修は「企業内のDX化に伴う訓練」に位置づけられます。

このコースの対象になるには、OFF-JTで実訓練時間が10時間以上あり、次の3類型のいずれかに当てはまる必要があります。

  1. 事業展開を行うにあたり、新たな分野で必要となる専門的な知識及び技能の習得をさせるための訓練
  2. 事業主において企業内のデジタル・デジタルトランスフォーメーション(DX)化やグリーン・カーボンニュートラル化を進める場合にこれに関連する業務に従事させる上で必要となる専門的な知識及び技能の習得をさせるための訓練
  3. 企業内の人事及び人材育成に関する計画に基づき、今後従事することが予定される職務に必要となる専門的な知識及び技能の習得をさせるための訓練

AI研修の受け皿になるのが、2番目の「企業内のDX化に伴う訓練」です。

新規事業を立ち上げる予定がなくても、社内の業務をAIで変えていくという文脈であれば検討の対象に入ります。ここが実務上いちばん使いやすい入口でしょう。

ただし、該当するかどうかを決めるのは労働局です。訓練の内容次第で判断は変わるため、「DX化に伴う訓練だから当然対象」と考えるのは早計になります。

厚労省の活用事例にもAIは登場する

厚生労働省のパンフレット自体に、AIを使った取り組みが活用事例として載っています。

「AI研修が対象になり得る」というのは、こちら側の解釈ではありません。

厚生労働省が公開しているパンフレットのDX関連の活用事例欄には、次のような例が挙げられています。

  • 医療・福祉(従業員500名程):電子カルテと各部門に分かれたシステムの統合、オンラインによる診察やAIを活用した問診等、診療領域のDX化を進めるため、医療に従事する従業員にDX訓練を受講させる
  • 運輸・郵便業(従業員50名程):RPAを活用して請求書・伝票書類、日報・労務管理データの電子化と自動化を図るとともに、AIを活用して配送ルートの最適化を行い、配送時間・車両費の削減や労働者不足の解消を図るためのデジタル人材育成の訓練
  • 小売業(従業員30名程):営業部門において、ITツールを活用したWEB集客のノウハウを習得させるための講座

注目したいのは、いずれも「AIを学ぶこと」自体が目的になっていない点です。

問診を変える、配送ルートを最適化する、集客のやり方を変える。業務をどう変えるかが先にあって、そのために必要な知識を学ぶという順番になっています。

この順番は、あとで説明する「対象外になるケース」を理解するうえでも重要な手がかりになります。

いくら戻るのか:経費75%・賃金1時間1,000円で試算する

助成額の試算表のイメージ

いちばん気になるのは「結局いくら戻るのか」でしょう。

この助成金は、訓練にかかった経費と、訓練を受けている間の賃金の両方が対象になります。

ただし「最大75%」という数字だけを見ていると、実際の金額を読み違えることがあります。

ここでは助成率と単価、具体的な試算、そして見落とされやすい限度額について解説します。

助成率と賃金助成の単価(中小企業・大企業の比較)

中小企業は経費の75%、大企業は60%。賃金助成の単価は倍の差があります。

助成の中身は「訓練経費」と「訓練中の賃金」の2本立てになっています。企業規模によって条件が変わるため、まず自社がどちらに当たるかを確認してください。

項目中小企業大企業
経費助成率75%60%
賃金助成(1人1時間あたり)1,000円500円
設備投資加算(1コースの導入費用あたり)50%

中小企業のほうが手厚く設定されており、賃金助成にいたっては2倍の開きがあります。

ここでいう中小企業の範囲は、業種ごとに資本金と従業員数で決まります。たとえば卸売業なら資本金1億円以下または従業員100人以下が該当します。

詳しい区分はパンフレットに一覧があるので、自社の業種で確認しておくと確実です。

なお、この賃金助成の単価は過去に引き上げられています。令和5年4月時点のパンフレットでは960円でしたが、現行は1,000円です。

ウェブ上には改定前の単価を載せたままの記事も残っているため、他社の解説を読むときは情報の更新日に注意してください。

受講者3名・20時間・研修費30万円の場合の概算

3名・20時間・30万円の研修なら、経費と賃金を合わせて28.5万円が助成の目安になります。

具体的な数字で計算してみましょう。ここでは中小企業が、受講者3名・実訓練時間20時間・研修費30万円(税別)の研修を実施したと仮定します。

経費助成
30万円 × 75% = 22.5万円

賃金助成
3名 × 20時間 × 1,000円 = 6万円

合計
22.5万円 + 6万円 = 28.5万円

研修費30万円に対して28.5万円ですから、負担は大きく変わります。金額の規模がつかめたでしょうか。

ただし、これはあくまで支給が決定された場合の概算です。労働局の審査を経て決まるものなので、この金額が保証されるわけではありません。

また、賃金助成の対象は所定労働時間内に実施した訓練に限られます。休日や時間外に研修を組むと、その分は賃金助成の対象から外れる点にも注意が必要です。

自社の見積書の金額に置き換えて計算すれば、おおよその規模はつかめるはずです。

見落としやすい「1人1訓練あたりの限度額」

75%は無制限ではありません。1人1訓練あたりの上限額が別に決まっています。

「最大75%」という表現だけを見ると、高額な研修ほど多く戻ってくるように思えます。しかし実際には、経費助成には1人1訓練あたりの限度額が設定されています。

実訓練時間中小企業中小企業以外
10時間以上100時間未満30万円20万円
100時間以上200時間未満40万円25万円
200時間以上50万円30万円

たとえば1人あたり100万円の研修を20時間受けた場合、75%なら75万円のはずですが、実際の上限は30万円です。

訓練時間が短く単価の高い研修ほど、この上限に届きやすくなります。研修を選ぶときは金額だけでなく、時間数との組み合わせで考えたほうが実態に近づきます。

このほかにも、次のような制限が設けられています。

  • eラーニング・通信制の場合:中小企業15万円、大企業10万円
  • 定額制サービスの場合:1人1月あたり2万円
  • 賃金助成の限度時間:1人1訓練あたり1,200時間
  • 1事業所が1年度に受給できる上限:1億円
  • 受講回数:1人の労働者につき1年度で3回まで

なぜ2026年度が最終年度なのか?

この制度には期限があります。

事業展開等リスキリング支援コースは、そもそも期間限定の助成金として創設されたもので、令和8年度=2026年度が最終年度とされています。

しかも計画届には提出できる期間が決まっているため、実際のタイムリミットはもっと手前にあります。

ここでは制度の期限と、逆算で見えてくる現実的なスケジュールについて解説します。

令和4年度〜8年度の「期間限定」として創設された制度

このコースは、はじめから令和8年度までの期間限定として作られた制度です。

意外に知られていませんが、この制度は恒久的なものではありません。厚生労働省のパンフレットの冒頭には、次のように書かれています。

人材開発支援助成金(事業展開等リスキリング支援コース)は、令和4年~8年度の期間限定の助成金として創設しました。

令和8年度は2026年度、つまり2027年3月末までにあたります。

制度の設計上、2026年度が最後の年度とされているわけです。「そのうち使おう」と考えている企業にとっては、その「そのうち」が残り少ないことになります。

延長されるかどうかは、現時点では公表されていません。ここでは「令和8年度までの期間限定とされている」という事実の確認にとどめます。

最新の扱いは厚生労働省のサイトか、都道府県労働局で確認してください。

計画届は「6か月前から1か月前まで」=逆算するとタイムリミットは早い

計画届には提出できる期間があり、早すぎても遅すぎても受け付けられません。

見落とされやすいのが、計画届の提出タイミングです。

厚生労働省のパンフレットには「訓練開始日から起算して6か月前から1か月前までの間」に提出すると定められています。

「1か月前まで」とだけ覚えている方が多いのですが、実際には6か月前という下限もあります。半年以上先の研修を先回りして届け出ることはできません。

逆算するとこうなります。

  • 2027年2月に研修を始めたい → 計画届の提出は2026年8月〜2027年1月の間
  • 来月から研修を始めたい → 間に合わない

思い立ってすぐ研修を始める、という進め方は制度上できないわけです。

研修の内容を決め、見積を取り、社内の書類を整えたうえで、開始日の1か月前には提出を終えている必要があります。

なお、定額制サービスによる訓練の場合は、契約期間の初日から起算して1か月前までが期限になります。

延長されるかは、現時点では決まっていない

延長されるかどうかは未定です。制度が続く前提で計画を立てるのは避けたほうが賢明でしょう。

期間限定と聞くと「どうせ延長されるのでは」と考えたくなります。実際、そうなる可能性は否定できません。

ただ、現時点でそれを裏づける情報は公表されていません。延長を前提に計画を立てて、結果的に制度がなくなれば、想定していた助成が丸ごと消えることになります。

もうひとつ押さえておきたいのが、パンフレットに書かれた次の一文です。

この助成金は、予算の範囲内で支給されるものです。

つまり、要件を満たしていれば無条件に支給される性質のものではありません。制度の期限とは別に、予算という枠も存在するわけです。

期限があり、予算にも限りがある。この2つを踏まえると、使うつもりがあるなら早めに動いたほうが確実だといえます。

申請の流れとつまずきやすい点

手続きの流れそのものは複雑ではありません。

ただ、期限や事前準備を知らないまま進めると、途中でつまずきます。

ここでは計画届から支給申請までの3ステップと、押さえておきたい期限、そして研修を申し込む前に社内で整えておくべきことについて解説します。

計画届 → 訓練の実施 → 支給申請の3ステップ

手続きは計画届の提出、訓練の実施、支給申請という3段階で進みます。

全体の流れはシンプルです。

  1. 職業訓練実施計画届(様式第1-1号)を提出
    必要書類とあわせて、都道府県労働局へ提出します。申請は雇用保険適用事業所ごとが基本ですが、本社がまとめて行うことも可能です。
  2. 訓練を実施する
    計画に沿って研修を実施します。ここで見落としやすいのが費用の支払いで、訓練にかかった費用は支給申請までに支払い終えている必要があります
  3. 支給申請書(様式第4-2号)を提出
    訓練終了後に、必要書類を添えて提出します。

この後、労働局の審査を経て支給または不支給が決定されます。

審査には相応の時間がかかると案内されているため、資金繰りの面では「あとから戻ってくるお金」として扱うのが現実的でしょう。

なお令和7年度以降、支給・不支給の審査は支給申請後にまとめて行われる運用に変わりました。計画届の段階で可否が決まるわけではない、という点は覚えておいてください。

提出期限のまとめ

計画届は訓練開始の6か月前〜1か月前、支給申請は訓練終了の翌日から2か月以内です。

期限を一覧にまとめておきます。

手続き期限
計画届の提出訓練開始日の6か月前から1か月前までの間
支給申請訓練終了日の翌日から起算して2か月以内

どちらも過ぎてしまうと受け付けられません。とくに支給申請の2か月は、研修が終わって一段落したころに来るため、うっかり忘れやすいタイミングになります。

補足として、次の点も押さえておいてください。

  • 定額制サービスによる訓練の計画届は、契約期間の初日から起算して1か月前まで
  • 計画の内容に変更が生じた場合は、変更届の提出が必要
  • 訓練開始日を前倒しする場合、当初の計画届の提出日が変更後の開始日の1か月前までである必要がある

3つ目は見落とされがちです。研修日程を前倒しにすると、それだけで要件を満たさなくなることがあります。

事前に社内で決めておくこと

申請の前提として、推進者の選任と社内計画の策定を先に済ませる必要があります。

研修を申し込む前に、社内で整えておくべきものがあります。厚生労働省は申請の前提として、次の2つを挙げています。

  • 社内の職業能力開発推進者の選任
  • 社内の事業内職業能力開発計画の策定

どちらも聞き慣れない言葉かもしれません。ざっくりいえば、人材育成の担当者を決め、社内でどう人を育てていくかの計画を文書にしておく、ということになります。

つまずきやすいのは順番です。研修会社と話が盛り上がって先に契約してしまい、あとから社内の体制が整っていないと気づく——というパターンは珍しくありません。

計画届の提出期限が訓練開始の1か月前であることを考えると、社内準備はさらにその前に終えておく必要があります。

研修の内容を検討し始めた段階で、並行して着手しておくのが安全です。

対象にならないケースと、支給が確約されない理由

AI研修 助成金でもっとも注意したいのが、対象外になるケースです。

「AIの研修だから対象になるだろう」と考えて進めた結果、要件を満たしていなかった——という事態は避けたいところ。

ここでは厚生労働省の記載をもとに、対象外と判断されやすいパターンと、支給が確約されるわけではない理由について解説します。

「ツールの操作方法を覚えるだけ」の研修は対象外

ツールの操作習得が中心の研修は、助成の対象外と判断される可能性があります。

ここが本記事でいちばんお伝えしたい部分です。厚生労働省のパンフレットには、対象にならないものとして次のように書かれています。

単に既存のアプリやシステムを購入してその操作方法を習得する場合や、コンサルタントによる指導は、対象になりません。

単にデジタル機器を使用して文章・数値の入力や、書式・レイアウトの変更程度の初歩的な操作を行う内容のみの訓練は対象になりません。

さらに、助成対象とならないOFF-JTの一覧には「自社の業務で用いる機器・端末等の操作説明」も挙げられています。

これをAI研修に当てはめるとどうなるでしょうか。

「ChatGPTの使い方を覚える講座」のように、ツールの操作を習得することが目的の研修は、対象外と判断される可能性があります

AIというテーマを扱っていれば自動的に対象になる、というものではありません。

チラシでいえば、印刷機の操作を覚えるのが前者、どんなチラシを撒けば客が来るかを考えるのが後者にあたります。

つまりAI研修でも、ツールの操作ではなく業務をどう変えるかが軸になっているかどうかが問われます。

先ほど紹介した厚生労働省の活用事例を思い出してください。

問診を変える、配送ルートを最適化する——いずれも業務の変革が先にあり、そのために必要な知識を学ぶという構成でした。

もっとも、最終的に判断するのは労働局です。自社の研修がどちらに当たるか迷う場合は、計画届を出す前に相談しておくと確実でしょう。

訓練時間は10時間以上。ただし対象外の時間は除いて数える

対象外の内容を除いたうえで10時間以上必要です。10時間ちょうどの設計は危険といえます。

このコースの要件のひとつが、実訓練時間10時間以上です。多くの解説記事はここで話を終えますが、実は続きがあります。

カリキュラム全体のうち一部に含まれる場合も、その時間は助成対象となりませんので、実訓練時間数の算定から除外してください(これらを除外して算定した実訓練時間数が、10時間以上必要です。

つまり、カリキュラムの一部に対象外の内容が混ざっていた場合、その時間を差し引いた残りが10時間以上でなければなりません。

ここに落とし穴があります。

たとえば10時間ちょうどの研修を組んだとします。そのうち1時間が「ツールの操作説明」と判断されれば、残りは9時間。

要件を満たさなくなり、助成そのものが受けられない可能性が出てきます。

研修を設計する段階では、時間数に余裕を持たせておくのが安全でしょう。ぎりぎりで組むほど、判断のブレがそのままリスクになります。

計画届を出しても、支給が確約されるわけではない

計画届の提出は支給の確約ではありません。厚生労働省自身がそう明記しています。

最後に、いちばん誤解されやすい点を確認しておきます。パンフレットには次の一文があります。

なお、計画届を提出したことをもって、助成金が確実に支給されるものではありません。

計画届が受理されたからといって、支給が決まったわけではないということ。実際の審査は支給申請の後にまとめて行われます。

研修費用を立て替えたうえで、あとから審査を受ける流れになります。

参考までに、AI研修とは直接関係しないものも含め、対象外とされている訓練の代表例を挙げておきます。

  • 接遇・マナー講習など、社会人としての基礎的なスキルを習得する講習(DX・GX化に必要な訓練である場合は除く)
  • 日常会話程度の語学や話し方教室など、趣味教養を目的とするもの
  • コンサルタントによる経営改善の指導、自社製品・サービスの説明、QCサークル活動
  • 意識改革研修、モラール向上研修
  • 管理職研修・マネジメント研修・リーダーシップ研修(人事・人材育成計画に基づく訓練の場合)
  • 法令で事業主に実施が義務付けられている講習
  • 労働者が自発的に行うもの
  • 専らビデオのみを視聴して行う講座
  • 海外・洋上で実施するもの
  • 現場実習や営業同行トレーニングなど、通常の生産活動と区別できないもの

助成金ありきで研修を決めるのではなく、まず自社に必要な研修を設計し、それが制度の要件に合うかを確認する。この順番のほうが、結果的に失敗が少なくなります。

まとめ:まず何から始めるか

AI研修に使える助成金のしくみを見てきました。

中小企業なら経費の75%、賃金は1人1時間あたり1,000円。

ただし対象になるのは「業務をどう変えるか」から設計された訓練で、制度自体も令和8年度までの期間限定とされています。

最後に、実際に動き出すための手順と相談先について解説します。

最初にやることは3つ

研修の設計を確認し、提出時期を逆算し、労働局に相談する。この順番で進めます。

ここまでの内容を、動き出すための3ステップにまとめます。

  1. 自社の研修が「DX化に伴う訓練」として設計できるかを確認する
    ツールの操作習得が中心になっていないか。業務をどう変えるかが軸になっているか。判断材料は前章のとおりです。
  2. 訓練開始日から逆算して、計画届の提出時期を決める
    提出できるのは開始日の6か月前から1か月前まで。研修の日程が決まったら、すぐカレンダーに落とし込んでおきましょう。
  3. 都道府県労働局に相談する
    対象になるかどうかの判断は労働局が行います。迷う点があれば、計画届を出す前に確認しておくのが確実です。

あわせて、前章で触れた社内の準備——職業能力開発推進者の選任と事業内職業能力開発計画の策定——も並行して進めてください。

相談先は都道府県労働局と社労士

制度の可否判断は労働局、申請実務は社会保険労務士の領域になります。

相談先は役割で分かれています。

  • 都道府県労働局:自社の研修が対象になるか、要件を満たしているかの確認
  • 社会保険労務士:計画届や支給申請の書類作成、実務全般

助成金の申請書類は種類が多く、記載内容も細かく決められています。

本業のかたわら自力で進めることも不可能ではありませんが、顧問社労士がいるなら早い段階で相談したほうが確実でしょう。

なお本記事は制度のしくみを解説したものであり、個別の企業が支給を受けられるかどうかを判断するものではありません。

実際に申請を進める際は、必ず労働局または社労士にご確認ください。

士業の方がAIをどう業務に取り入れているかについては、社労士のAI活用でも取り上げています。

研修そのものの設計から相談したい場合

助成金を使うなら、研修の中身が「業務をどう変えるか」から設計されている必要があります。

ここまで見てきたとおり、この助成金で問われるのはAIというテーマそのものではなく、業務をどう変えるための訓練なのかという設計です。

ツールの使い方を一通り教わって終わる研修では、対象外と判断される可能性が残ります。

逆にいえば、自社の業務のどこをAIで変えるのかが明確なら、制度の趣旨に沿った形にしやすくなります。

株式会社ローカスでは、助成金の活用を前提としたAI研修をご用意しています。

コース料金(税別)
経営層コース(単発相談)2時間 15万円
経営層コース(AI活用サポート)月8万円〜(月2時間×6ヶ月〜)
業務活用コース基本料金30万円 + 受講料5万円/人
業務ツール自作コース基本料金40万円 + 受講料10万円/人

なお、助成金の支給は労働局の審査によって決まるものであり、当社が支給を保証するものではありません。対象になるかどうかの最終的な判断も労働局が行います。

「自社の場合はどう設計すればいいのか」という段階からのご相談も承っています。詳しくはAI研修のご案内をご覧ください。

まとめ

本記事では、AI研修に使える助成金について解説しました。

  • AI研修は人材開発支援助成金「事業展開等リスキリング支援コース」の対象になり得る
  • 中小企業なら経費の75%、賃金は1人1時間あたり1,000円。ただし1人1訓練あたりの限度額がある
  • 制度は令和4〜8年度の期間限定とされ、2026年度が最終年度
  • 計画届は訓練開始日の6か月前から1か月前までの間に提出する必要がある
  • ツールの操作方法を覚えるだけの研修は、対象外と判断される可能性がある

重要なのは、助成金ありきで研修を選ぶのではなく、自社の業務をどう変えるかから研修を設計することです。

その形になっていれば、結果的に制度の要件にも合いやすくなります。

「自社の場合はどう設計すればいいのか」という段階からのご相談も承っています。株式会社ローカスへお気軽にお問い合わせください。

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この記事を書いた人

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Masafumi Otsuka

2000年よりEC業界にてデジタルマーケティングの世界へ。
20年以上のキャリアの中で、多種多様な業種の事業成長を支援してきました。Google広告運用歴13年、Meta広告運用歴12年の実績に加え、Meta社認定「METAクリエイティブ戦略エキスパート」を保有。
データに基づく「数値改善」と、認定資格を活かした「売れるクリエイティブ戦略」の両面から、本気で成果にコミットします。